これは本の終わりではなく始まり

 
 以前、AmazonのKindle国際版を買ったという話をしましたが、先日、ソフトウェアアップデートがあり、PDFの表示が可能になりました。

 今までは米Amazonから洋書を買う事しかできず、日本語の本を買う事はおろか、改造しないと日本語を表示させる事すらできなかったのですが、びっくりするくらいあっさりと日本語を表示できるようになりました。

 さっそく、青空文庫から適当に数冊落とし、PDFに変換、KindleをUSBでMacと繋いでドラッグ&ドロップで転送。

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 無事表示できました。文字の大きさも問題なしです。

 今まで、洋書を数冊買って試してみたのですが、英語が読めないのであまり感動はなく『ふーん』という感じだったのですが、日本語の小説が紙の本と同じように普通に読めるのは、とてもいいです。なんと言っても場所をとらない。どれだけ本を買っても本棚を圧迫しない。読みたい本がいつでも手元にある。
 日本でも電子ブックの販売を始めたら、むやみに買ってしまいそうです。今、iPhoneのアプリやオーディオブックがまさにそういう状態で、ちょっと気になるとつい買ってしまうのです。

※追記。現行のKindleには日本語フォントは搭載されていないので、PDFファイル側に日本語フォントが埋め込まれている必要があります。

 さらに、試しに自分の描いた絵をPDFにして表示してみました。階調が4段階(失礼、16段階でした)しかないという事で、まったく期待していなかったのですが…………!!なんと!ものすごいきれいです!!

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これはゲラのスキャンがベースなので実際はもっときれい。セリフが普通に読める事の確認。

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 これはまったく調整していないデータなので、Kindleが適当に縮小しているし、濃淡もKindleのディスプレイに最適化されていないので、実際はもっときれいにできるはずです。さらに、実物はこの写真よりずっときれいです。

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 これは鉛筆画の線画。ちょっとかすれている部分はオリジナルの鉛筆の線も薄い部分なので、濃淡のはっきりした線画ならもっととくっきり出ると思います。

 これはちょっと嬉しい誤算というか、このくらいの解像度でも、漫画はそこそこ読めるのではないかという気がしてきました。僕の原稿の場合、カラーなのできれいに見えるけど、線の細いペン画とか、スクリーントーンなどがどれくらいきれいに再現できるかはちょっと分かりませんが。
 漫画を表示するには見開きをどうするか、とか、多少問題が残りますが、かなりいい感じです。

 サンプルの漫画『リューシカ・リューシカ』のオリジナルのファイルはこちら
イラスト『ですぺら』のサイトはこちら


 『本は紙でなくては』『紙の質感がないと本じゃない』という意見の人はいると思いますが、個人的には小説のような文字の本に関しては、完全に電子ブックの時代が来た、と感じました。

 漫画に関しても、きちんと最適化すれば、かなりいけると思います。Kindleで漫画雑誌や単行本が読めるようになり、Amazonからワンクリックで買えるのなら、僕はかなり大量に買うと思います。今、僕が本を買うときに一番抵抗になっているのは『もう家に本を置く場所がない』という事と『読む時間がとれない』という事だからです。
 場所に関しては、Kindleで完全解決です。時間に関しても、本がKindleで一元管理できるなら、どこに行くにもKindleを持ち歩くと思うので、今までiPhoneやゲームで潰していた隙間時間を、Kindleで読書する事に使うようになると思います。

 写真が大量にある本や、画集などは、まだ紙の本に軍配が上がります。相当きれいなカラー液晶の端末が出ない限り、このジャンルは紙の本が優勢でしょう。

 2010年が電子ブック元年になるという予想を、最近ニュースでよく目にするようになりました。僕もそう思います。世界はもう電子ブックに向けて動き出しています。そして例によって例の如く、日本は変化を恐れてずるずると取り残されつつあります。

 僕も紙の本に愛着はあるし、無くなって欲しくはないですが、今電子ブック化の流れに乗り損ねると、紙の本の文化が残るかどうか以前に、日本語という文明の存続が危うくなる気がします。

 Appleが近いうちにタブレット端末を出すだろうと言われています。
 もし、それと同時にiTunesにブックストアが開かれるようなら、音楽がそうだったように、それが紙の本から電子ブックへの流れの決定打になる可能性がかなり高いです。

 本を作る人も、書く(描く)人も、出版する人も、フットワークを軽くしておく必要があります。最初に飛び出した人の勝ちです。

※Kindleのディスプレイを4階調、と書いてしまいましたが16階調の誤りでした。あ、液晶と書きましたがもちろんKindleのディスプレイはeインクです。
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テキストはともかく絵の表示がどうなるのか疑問だったんですが、分かりやすくとても参考になりました。ありがとうございました。

pdf表示ができるのは朗報ですね。これで私もバイナウです。ところで青空文庫のpdf化には「てふてふ君」という素晴らしいサイトがあります。振仮名とか綺麗に処理した縦書きのpdfをweb上でワンタッチでつくってくれます。 http://www.aozora.jp/tools/tex/ 未見でしたらぜひどうぞ。

先日アメリカ旅行をした際に、iPodTouchのGoodReaderにPDF化した旅行ガイドを入れて行きました。

これで十分実用になりましたし、コンパクトになる事で持ち歩きの面で凄くメリットがありました。

家の中でも、CDケースが棚から無くなった様に、書籍の占める物理スペースがデジタルに置き換わって小さくなっていくだろうなと感じています。

Kindleのディスプレイは液晶ではないですよ。
http://www.eink.com/products/matrix/imaging_film.html

>rinさん
どうもです。訂正しました。e inkだという事は分かっていたのですが、広義で液晶に分類していいものだと思っていました。

アップデート後のKindle2.3にも日本語フォントは入っていないのですが…
どのソフトを使ってPDFに変換されましたか?

>Strangerさん
そうなんですか?Macの標準のテキストエディタで、青空文庫のテキストファイルを普通にpdf形式で保存しただけですが………。

どうやら、Mac OS Xの「プリント→PDFとして保存」で作成したPDFファイルにはフォントが埋め込まれるようですね。
その他のフォント埋め込みしないようなソフトウェアで作成したPDFは、Kindleに入れても日本語表示できませんのでご注意を。
フォントが埋め込まれているかどうかは、以下のサイトでもチェックできます。
http://pdf.printjapan.com/

Kindle絵の表示きれいですね。とても参考になりました。私はSonyのreaderを買ってみましたのでレビューしてみました。よかったらどうぞ。http://tyororin.blog80.fc2.com/blog-entry-552.html

>濃淡もKindleのディスプレイに最適化されていないので、実際はもっときれいにできるはずです。

Kindleのみに最適化はできるかもしれませんが,ソニーやその他の電子ブックリーダー
それに次世代Kindle(高解像度化,カラー対応)など複数の端末への最適化は難しそう
ですね.

安倍さんが挙げた以外メリットを考えてみました
・著者の取り分(印税)が増える
・経年劣化(色あせ)が無い
・もしかしたら安くなる
・絶版が無くなる


デメリットは
・『暴れん坊本屋さん』などのカバー下(裏)の遊び
・DRMがめんどくさそう(回し読み,友人に貸すことができない?)
・(世の中のほとんどの)カラーマネジメントされていない表示デバイスで
 作り手の意図した色が表示されない


個人的には絶版が無くなるというのに一番メリットを感じます.最後に挙げた
デメリットについて安倍さんはどのように考えておられますか?

>おいどんさん
・『暴れん坊本屋さん』などのカバー下(裏)の遊び
●Twitterや過去のエントリでも書いていますが、電子ブックリーダーが普及したら、買った本のブックカバーやストラップなどが出たり、書籍データ内にイースターエッグ的な遊びが入ったりするでしょう。

・DRMがめんどくさそう(回し読み,友人に貸すことができない?)
●できないどころか、既に友達に本を貸せるサービスはスタートしています。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0910/21/news038.html
 DRMに関しても、日本はまた北風と太陽の北風のような間違いを犯すかもしれませんが、AppleのiTunes storeの音楽やオーディオブック、アプリなどの販売はDRMの息苦しさを感じさせません。まあ、Appleがソフトとハードを両方つくり、ユーザーを囲い込んでいるからできる事ですが……。

・(世の中のほとんどの)カラーマネジメントされていない表示デバイスで
 作り手の意図した色が表示されない
●雑誌に載るイラストが既に思い通りの色ではないので(精一杯頑張っていますが)気になりません。
 というか、カラーの電子書籍が普及したらカラーマネジメントは当然されるので、もともとデジタルで描かれたイラストやデジカメで撮られた写真は紙より再現性が上がるかもしれません。
 モニタの発色の違いはわずかな差ですが、発光するモニタで描かれた絵が紙とインクになる時の方が、落差は大きいです。

 本が電子化されると失われるものも色々あるので、メリットばかりとは思いませんが、描き手の立場としては、正直感傷に浸ってる時間は残されていないと思っています。
 理想を言えば、ピラミッドの中心に電子ブック、底辺に安い紙で気軽に読み捨てられる安価な本、ピラミッドの頂点は豪華な装丁と最高の印刷の紙の愛蔵本、みたいに棲み分けができるといいのですが。

なるほど,とても勉強になりました.いろんな意味で過渡期なんですね.過渡期だからこそ乗り遅れてはいけないですね.(日本は既に遅れているか・・・)

kindle自体に日本語を埋め込めば、フォント埋め込まなくても表示できますよ。
kindle 日本語フォント導入はっく で検索できます。

文字主体の本に関しては、
新しモノ好きな人のためのガジェット、ではなく
むしろ万人が使えるユニバーサルな媒体として
今後普及が進むでしょうね。

文字の拡大や音声出力もビューワが対応すれば
ひとつのデータから可能だし、
ハードが対応すれば点字等への展開だってできる。

辞書などは、元の紙版が高い&頻繁に買わない事もあって
随分電子版が認知されてきているので、
ディスプレイで文字を読む事に抵抗のない世代が増えれば、
加速度的に書籍の電子化が進むと思います。
プロフィール

安倍吉俊

Author:安倍吉俊


イラストレーター。漫画集『回螺』、画集『垓層宮』発売中。
ガンガンONLINE『リューシカ・リューシカ』連載中。
代表作『lain』『NieA_7』『灰羽連盟』『TEXHNOLYZE』
Macユーザー。カメラと自転車好き。爬虫類と魚を飼育中。
何かありましたらabetc*mac.comまで(*を@に変えてください)。

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