世界考 その02

 
 前回のトンデモ話がわりと面白いと言ってもらえたので、気をよくして、というわけでもないけど、前回の話とちょっと関係のある思考実験をひとつ。

 演算装置内部にもうひとつの宇宙をつくる事ができるでしょうか、つまり宇宙シミュレーターは造れるでしょうか?

 地球シミュレーターというのはあります。もちろん本当に地球を原子一つ一つの単位でシミュレートしているわけではないですが、おおよその気候変動が予測できるくらいの精度はあります。
 もしかしたら今地球上にあるすべてのコンピュータを繋いだら、完璧な六畳一間シミュレーターくらいはできるかもしれません。

 普通に考えたら、宇宙シミュレーターはできない、と前回書きました。宇宙を演算する装置の存在している宇宙を演算する装置を作ろうとすると、その演算空間内に無限に『宇宙を演算する装置』を含んでしまい、必要なマシンパワーが無限大になってしまうからです。

 では、架空の宇宙のシミュレーターということで、『宇宙を演算する装置を含まない宇宙』という初期設定でスタートしたらどうでしょう?

 1立方cmの空間内に起きるあらゆる事を演算する装置が1立方cm以内でつくれないと、その装置は宇宙より大きくなってしまうので、そんなものはやはりつくれない気がします。前回書いたように、架空の空間をシミュレートする装置は、その装置が存在する空間より小規模にならざるを得ないという事でしょうか。

 で、ここでちょっと考え方を変えてみます。

 演算速度が追いつかない時に、演算する空間の規模を小さくするとか、演算を粗くするのではなく、演算空間内の時間の進み方が実時間より遅くても構わない、と考えたらどうでしょう?

 演算能力がどんなに低くても、時間の制約がないなら原理的にはあらゆる計算をこなす事ができます。iPhoneくらいの大きさの演算装置でも、1秒ぶんのシミュレートに1兆年くらいかかるかも知れないけど(もっとか)、ものすごくざっくり言えば宇宙シミュレーターになりうるわけです。

 もちろん、実際やろうとしたら広大なメモリ空間が必要なので、演算装置はやはり巨大な物体にならざるを得ないとは思うのですが、時間の制約がないなら、とにかくできる限りデータを圧縮して、演算する部分だけ解凍して演算してまた圧縮して……を繰り返す事で、あくまでも原理的にですが、超かたつむり宇宙シミュレーターならば、宇宙そのものほど巨大でないサイズで造れるのかもしれません。

 宇宇宙が広がりきってエントロピーが極大に達して、すべてが冷え切ってしまった時、最後に駆動するものは、宇宙を夢見る巨大なかたつむり思考装置なのかもしれません。
 それは、真空に生まれる僅かな揺らぎを糧にして、ゆっくり演繹を進めてゆくのかもしれません。エントロピーが極大に達した宇宙では、時間の概念は意味を失うので、演算速度が遅い、という事も何のデメリットにもならないでしょう。
 自己の演算空間内部に、『宇宙シミュレーターって造れないかな?』という問いを発する知性体が発生する事を夢見て………。

 お、なんかそういうSFが書けそうだな(笑)。
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 本当に安倍先生は、「頭が良い」というより「頭を良く使っている」方だという認識が強くなりました。

 先生のSF、期待しています。

そんな時間はないかもしれませんが、スターオーシャン3に上位世界的な発想があったのでやってみると面白いかもしれませんよ

そのシミュレータの中に発生した生命が自分の世界を創った神の存在を認識できるか、とか考えていくととてもロマンチックな話ですね。
丁度映画化された「神様のパズル」っていう小説がそんなSFでした。

ほぼ無限とおりのシュミレーションをこなすには最低限の確率的切捨てと、
あとは時間を区切らないで連続性を持たせることが必要でしょうね。
一瞬を定義するとどんなに短い時間も無限長になってしまいますので

 情報ありがとうございます。神様のパズルは、タイトルは知っていましたが、そんな話だったんですね。

 時間の区切りに関しては、どこかでプランク時間が時間の最小単位、というような説明を読み囓った記憶があるのですが、どうなんでしょうね。測定できる有意の最小単位だとしても、それは測定する側からそう見えるだけで、演算する側はもっと細かく計算しているのかも知れないし……。

 まあ、考え出すときりがないですが。

グレッグイーガン『順列都市』の塵理論っぽい思考実験ですね.

グレッグ・イーガン『順列都市』が、まさにそんなテーマを扱っています。
シミュレータに移り住むことで不死を得た人間が、さらにシミュレータ内にシミュレータをつくり、そこに誕生した知的生命体とコンタクトをとる、なんて場面もあります。もし未読なら、お勧めです。

新城カズマ「サマー/タイム/トラベラー」を連想しました.

でも,『宇宙を演算する装置を含まない宇宙』はこの世界そのものだ,っていう考え方もできますね.この世界シミュレーター説.

小林泰三の短編に、算盤によってシミュレートされている世界の話が出てきます
『目を擦る女』に収録された"予め決定されている明日"という作品です

超かたつむり速度での計算であっても、シミュレートされている空間内での体感時間は上位空間とは共有されないので、シミュレートされている空間内でも内部の人間は普通に生活できると思います
その空間から見ると、上位空間の時間は超高速で経過していくように感じるはずです

最後の最期まで意味という意味を持っているのは
宇宙を夢見る巨大なかたつむり思考装置内の巨大なかたつむり思考装置の中でかたつm…
という回螺なんだよ!!
V
Ω ΩΩΩΩ<(r!rya!!

永遠のテーマ、というか解く事の出来ない(とされる)問題の類ですね。
こういった矛盾や完全解求める問題は時代と共にあっけなく解決されたりしますが、
それまでの過程を辿るのも面白いですね。

一般の有名ところではマトリックスでしょうか。仮想空間での生活。
自分としては終わりが納得異化内ので消化不良です。
それより先生のLainの方が何倍も面白かったです。

コンピュータが発展する前では、ハードウェアやソフトウェアの対決ではなく
神話等で同じ様な話がありますね。
神が地上を創造して…、人間が反逆して…、みたいな。

今のOSがハードウェアとの仲介をもこなして柔軟に複数のハード上で走る事が
可能な様に、シミュレータ上での実行を一部本物のハードウェアに丸投げして
しまうと…やはり処理を奪われた側がたまったもんじゃないですね。

シミュレート上に人間みたいな生物もしくは自己学習型コンピュータが出現して
自己の存在や世界に疑問をもったりしたらこれまた大変な事に。
ある程度下位側の不利になる行動や情報をオミットするようにしたとして、
それは本物ではないけれど限りなく本物を再現・検証する、もしくは何らかの
価値があるとしても、作られた側から見た場合認識できない制限を受けている事
自体が不完全な状態であるので…問題が連鎖分裂して収集がつかなくなりそうです。

現実で、地球銀河の星が生まれる速度は年10個程度らしいですが、
別の銀河でそれを遥かに越える数(4000個)の星が誕生している場所が
あるらしいです。->NASAの望遠鏡が「次々と星が生まれる銀河」を捉える
こちらから認識できていても別の次元なんでしょうかね。

あるいは、クアッドコアの様に並列実行できる何かによって派生したココと同じ
条件からスタートしたパラレルワールド、とか。
ああ、でもそうすれば現実として自分がいるココ自体が現実ではない事に…。
現実という定義自体が逆登ると終わりがない事象ですね。
プロフィール

安倍吉俊

Author:安倍吉俊


イラストレーター。漫画集『回螺』、画集『垓層宮』発売中。
ガンガンONLINE『リューシカ・リューシカ』連載中。
代表作『lain』『NieA_7』『灰羽連盟』『TEXHNOLYZE』
Macユーザー。カメラと自転車好き。爬虫類と魚を飼育中。
何かありましたらabetc*mac.comまで(*を@に変えてください)。

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