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安楽椅子探偵7解決編 おもしろがったり地団駄を踏んだり

 
 安楽椅子探偵7忘却の岬、の解決編が放送されました。今HDDに撮ったやつを観たところです。

 犯人当ては外してしまいました。一番予想者の多かった奴に僕も応募してしまいました。思う壺です。
 でも、綾辻、有栖川両氏が想定したトラップはほぼ全部読めていて、筋の通る回答ができていたと思うので、解決編の理屈と、ギャグテイストの演出はちょっと納得いかないのですが、まあそれも含めて面白かったです。
 DVDで1巻から観てみようかと思います。
 以下ネタバレ。

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テーマ : テレビドラマ
ジャンル : テレビ・ラジオ

安楽椅子探偵のものすごい広告効果?

 
 安楽椅子探偵と忘却の岬では、犯人を当てたい視聴者は証拠探しのために何度も繰り返しドラマを観る事になるのですが、それでちょっと面白い事に気づきました。

 まず、ものすごい数のカップヌードルとコーラと爽健美茶とからだ巡茶が出てくる事。登場人物は暇さえあればカップヌードルを食い、コーラと爽健美茶を飲みます。飲み食いしていなくても、ほとんどすべてのシーンに何らかの形でそれらの商品が出てきます。何となく棚にカップヌードルが積んであったり、台所に何気なく(いや、すげー目立つ形で)コーラと爽健美茶の500mlペットボトルがそれぞれ二本ずつ並んでいたり、挙げ句の果てはカップヌードルの食べている机の脇にカップヌードルの空き容器がペン立てとして映り込んでいたり………。

 最初は『なんか推理に関係あるのか?』と思ったりもしたのですが、まあ広告ですよね。………と思ったら、ペットボトルのデザインとカップヌードルの新メニューがその場面が2007年か2008年かを決める重要な手掛かりになってたりするから
あなどれない!

 でもまあ、広告なわけです。他にも、ピカソ展のCMの後で、本棚にちょっと目立つようにピカソの本が置いてあったり、新聞記事にスポンサーしている製薬会社の胃腸薬のマスコットキャラに酷似した図柄の薬の広告が入っていたり、auの携帯がどーんと大写しになったり(これはヒントとしても重要なカット)、視聴者が食い入るように画面を観る事を前提にして、ものすごい量の画面内広告が入っています。尋常じゃないです。しかもこのドラマのつくりの場合、広告が嫌味じゃなく、広告要素を探すのも楽しみの一つだったりします。
 しかも、視聴者が自発的に探して見ているので、広告効果は通常のCMより絶対高いです。まあ、こんな広告はこのドラマじゃないと成立しないけど、広告の未来に対する、ひとつのヒントになっているように思いました。

 あと、これだけ繰り返して観られると、出ている役者さんも、普通のドラマの何十本分もの露出効果になるんじゃないかという気がします。現に僕は主役の津田寛二の顔は今なら1km先からでも見分けられそうです。そしてちょっとファンになっている。

 アニメでもこういうのできないかなあ。

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安楽椅子探偵。この集合知時代にこんなエンターテイメントが成立するとは

 
 安楽椅子探偵というのは、綾辻行人、有栖川有栖コンビが数年おきに制作しているテレビドラマシリーズです。というか、僕も今回の第七弾で初めて知ったんですが。
 出題編と解決編の二本のドラマから構成されていて、まず事件が起きて主人公が真犯人とその犯行トリックに気づくまでを描いた出題編を観て、自分なりの推理を組み立てて、犯人とトリックを応募、もっともエレガントな回答をした一名に賞金が当たる、という、まあクイズ形式のドラマなのですが、試しに観てみたらこれが面白い。

 主事公は、6月13日未明、海馬地区という、もう三世帯しか民家のない地区を訪れ、足を滑らせて川に落ち記憶を失ってしまい、町の顔役である宗谷家に世話になりながら記憶を辿るうち、自分が事件の渦中にいる事が明らかになってゆく、というつくりになっています。

 99分の出題編のほとんどすべてのシーンに細かくヒントがちりばめられていて、意味の解釈次第で誰もが怪しく見える。
 それどころか、主人公に与えられる情報では現在は2007年であるかのように描かれているが(カレンダーや新聞が2007年)、主人公に観られないように隠されたテレビから漏れてくる音声では『北京オリンピック間近の……』といった言葉がかすかに聞き取れたり、2007年の新聞で地震が起きたと記載されている日に地震が起きていなかったり、何気なく置かれているジュースやカップ麺が2007年6月には発売されていないものが混じっていたりして、どうやらこの地区の住人全員が口裏を合わせて2007年のふりをしている事が分かってきます。
 しかし、さらによく見ると夜のシーンで空に浮かんでいる月の月齢を調べると、そのシーンは間違いなく2007年だったりもします。
 さらに細かく観察すると、主人公の親指に巻かれている絆創膏が、シーンごとに有ったり無かったりします。もちろん小道具のミスではありません。
 主人公の部屋の馬の置物が、何の前触れもなくあるシーンから無くなっていたり、ある人物の呼称が社長であったり会長であったり、凶器と思われるある物があるシーンまでは置いてあるのにあるシーンから後は無くなっていたり、調べ始めるときりがありません。同じドラマを1日に3回も観たのは初めてです。

 物語後半になって、主人公は15年前のある犯罪の容疑者で、もし犯人だとしたら2008年に時効が成立する事が分かります。しかし主人公の持ち物には英字新聞の切れ端があり、もし逃亡中の15年の間に海外に行っていた時期があれば、時効の時期は変わります。さらに、2008年ならば村はずれのトンネルが開通しており(2008年4月開通予定というポスターがある
)、もし現在が2008年なら劇中で起きた殺人の容疑者が村の外にまで広がります。ところが別なあるシーンでは『5月分』と書かれたトンネル工事の請求書を処理している場面があり、2008年4月の完成予定がずれてしまっている可能性も出てきます。

 最終的に容疑者は3人まで絞れたのですが、2007年なのか、2007年に見せかけて2008年なのか、2007年と2008年が混在しているのか、判別がつきません。いや、ここに拘るのは制作者の思う壺なのか………。

 まあ、そんな感じでこれはものすごい手間と努力の勝利だなあと感心したのですが、何よりすごいのはこれが現在、何でもググれば答えが出てしまう2008年に放送されている事です。
 実際、ちょいとググれば考察サイトやら掲示板やらが山のようにあり、物語のタイムテーブルをつくっている人、めぼしいシーンを片っ端からキャプチャしている人、もう何でもござれです。
 こんな情報が飛び交って、何日も真面目に知恵を絞っている人と、ググって3分の人が全く同じ情報を手に出来てしまう状況で、こういった企画を面白く成立させる事ができるような謎を考え出せる綾辻、有栖川両氏とドラマのスタッフの力量にはただもう驚くばかりです。
 僕はネットの普及に伴って、懸賞付き謎解きの企画は滅ぶと思っていたのですが、アイデアと作り込み次第でまだまだ全然いけますね。

 このくらいのミステリマニア向けの番組になると、視聴者の方も質が高くて、ファンサイトの情報などを見ると、何も考えずにググって他人の推理を拝借して知った気になるような手合いはあっさりふるい落とされるような、ちょっとしたミスリードが含まれていたりして、ニヤリとさせられました。
 掲示板のやりとりを見ても、これだけ微妙なヒントが山のようにあると、誰が犯人でもそこそこ整合性のある推理ができてしまったり、考えの足りない人、考えすぎの人の意見をより分けるためには自分自身がまず自分の考えを持っていなくてはならず、結局ネットに頼る人はかえって混乱するばかりになるような構造になっています。自然にそうなったのか、そうなるよう意図して作られたのかは分かりませんが、見事です。

 そんなわけで、僕は犯人を決めて応募してみました。多分一番無難な回答で、こいつが犯人だったらちょっと面白みがないなあと今になって思い始めてしまいましたが………。

 回答編はもうすぐです。楽しみです。

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プロフィール

安倍吉俊

Author:安倍吉俊


イラストレーター。漫画集『回螺』、画集『垓層宮』発売中。
ガンガンONLINE『リューシカ・リューシカ』連載中。
代表作『lain』『NieA_7』『灰羽連盟』『TEXHNOLYZE』
Macユーザー。カメラと自転車好き。爬虫類と魚を飼育中。
何かありましたらabetc*mac.comまで(*を@に変えてください)。

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